院長ブログ

体質を見極める:その4

2013.08.13

前回は解毒証体質について、お話させていただきました。解毒証その概念を理解した上で、1度診察をすると決して忘れない病態だと思います。しかし、痛みに限らず、解毒証体質というのはいろんな病態に関連しているように思います。しかし漢方を知らない多くの医師は、そのありとあらゆる疾患においてその体質や病態という概念を無視して治療を行い、「薬が効かない」「病気が治らない」「神経ブロックで痛みがとれない」と言われているのではないでしょうか。治療とは「病気を治す」のみでは無いと思っております。これが正しいのかどうかは未だに分かりませんが、私は治療とは「病態を治す」「体質を変える」であると思っております。ですので、私の診療の中心は西洋医学、東洋医学の両方を利用した「徹底的な病態の把握」「体質の見極め」が最も大切と考えています。さて今回の本題である「瘀血体質:おけつたいしつ」についてお話させてください。漢方を少しでもされる方々なら聞いたことぐらいはあるように思うくらい、どの本を読んでも、また漢方のお話を聞いても、「瘀血」という単語が頻回に出てきます。しかし、「瘀血」という病態を的確に記載してある書物はまったくありません。しかし瘀血が痛み以外においてもいろんな疾患における病態に関係していることは経験的にも間違いがないように思います。特に私は構造主義漢方というものを好んで実践しているので、どの漢方用語もできるだけ西洋医学的に説明できるように言い換えていますが、この「瘀血」と言う概念が東洋医学ではきわめて曖昧で、近いものが西洋の医学にはなかなか存在しないように思っています。そのため私の「漢方の6つの武器」では、「瘀血」を末梢循環(静脈環流)不全と定義し、「駆瘀血薬:瘀血を治す薬」を「末梢循環(静脈環流)を改善させる薬」と説明していますが、はたしてどうして静脈環流が悪くなると、いろいろな病気が難渋するのかを説明するのが、今現在においては出来ないように思います。ここからお話させていただく内容は、あくまで私の推論にすぎませんのでご了承ください。私は、神経障害性疼痛にせよ、侵害受容性疼痛にせよ、痛みというものの大半は、炎症性サイトカインによって説明ができると思っています。偏頭痛もCRPSもさらにはアトピー性皮膚炎も喘息もです。私の持論では、血管の浮腫によりその部位から炎症性サイトカインがある種の刺激によって漏出しているのではないかと考えています。それが浮腫が中心の病態や、炎症が中心の病態と考えれば、偏頭痛もCRPSもさらにはアトピー性皮膚炎も喘息も似たような病態であると考えられないでしょうか。ただ、西洋医学におけるこれらの治療には、今のところステロイドしか使えないというのがその治療の幅を狭めているのだ感じています。その隙間を埋めるのに漢方は有効だと思っています。いつか、CRPSや引き抜き損傷後痛、脊髄障害性疼痛などに、レミケード(TNF-α抗体療法)やアクテムラ(IL-6阻害剤)と言った薬剤が使えるようになれば、痛みの治療も飛躍的に向上すると感じています。

漢方の話ばかりではなんなので、たまにはペインクリニックの話も混ぜていきたいと思っております。